金利上昇・建材高騰の2026年——今、家を建てるべきかを建築家が答える

金利上昇・建材高騰の2026年——今、家を建てるべきかを建築家が答える

河添 甚
河添 甚 代表建築家 / KAWAZOE-ARCHITECTS主宰

金利上昇・建材高騰の2026年——今、家を建てるべきかを建築家が答える

2026年、住宅を取り巻く状況は二重の圧力にさらされている。

金利上昇と建材高騰。この二つの経済的ファクトが、「家を建てるタイミング」という問いを、かつてないほど切実なものにしている。

私のもとにも、同じ質問が繰り返し届く。「今、建てるべきですか。それとも待つべきですか」と。

この問いに対して、建築家として正面から答えたい。ただし、単なる損得計算ではなく、「住まいとは何か」という本質から。

2026年の住宅市場——金利と建材費が描く現在地

まず、現状を正確に把握しておく必要がある。

日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、同年7月には政策金利を0.25%へ引き上げた。2025年1月にはさらに0.5%へ。17年ぶりの水準である。

住宅ローン金利への影響は、すでに数字として現れている。変動金利は各行で0.15〜0.25%程度上昇。固定金利は長期金利の上昇を受け、フラット35で1.8〜2.0%台に達している。

一方、建材費の高騰も続いている。国土交通省の建設資材物価指数によれば、2020年を100とした場合、2024年末時点で木材は約125、鉄鋼は約140、生コンクリートは約130。輸送費の上昇も加わり、建築コスト全体が2020年比で20〜30%上昇している。

2026年の家を建てるタイミングを考える者にとって、これは避けて通れない「コストの地平線」だ。

「金利が上がると家は建てにくくなる」は本当か

金利上昇が住宅取得を困難にする——この命題は、半分正しく、半分は思考停止である。

確かに、金利1%の上昇は総返済額に数百万円の差を生む。3000万円を35年で借りた場合、金利が1%上がれば総返済額は約600万円増える。これは事実だ。

しかし、見落とされがちな視点がある。

金利が上がるということは、経済が正常化しているということでもある。デフレから脱却し、賃金が上昇する局面では、借入の「実質的な重さ」は軽減される可能性がある。

また、金利上昇局面では、不動産市場の過熱が抑制される。土地価格の高騰が一服すれば、総コストで見たときに必ずしも不利とは言えない。

「金利が上がったから建てられない」という判断は、金利という一変数だけを見た近視眼的思考だ。住宅取得は、金利・土地・建材・収入・ライフステージの複合方程式である。

建材高騰の実態——何がどれだけ上がり、何が落ち着いたか

建材高騰という言葉は、しばしば漠然と使われる。だが、何がどれだけ上がったかを正確に知らなければ、判断はできない。

最も顕著だったのは木材だ。2021年の「ウッドショック」では、構造用合板が一時2倍近くに跳ね上がった。現在は落ち着きを見せているが、2020年比で25%高い水準に定着している。

鉄鋼・アルミは、エネルギーコストと連動して高止まりしている。脱炭素政策の影響もあり、今後さらなる上昇リスクがある。

断熱材、特に高性能グラスウールやフェノールフォームは、省エネ基準の強化に伴う需要増で供給が逼迫。価格は30〜40%上昇している。

一方で、設備機器(キッチン・浴室など)は、為替の安定とともに価格上昇が鈍化しつつある。

建材高騰は一律ではない。「何を使い、何を省くか」という設計判断によって、コストの振れ幅は大きく変わる。これは、建築家と建てる意味が最も発揮される領域だ。

建築家が考える「それでも今、家を建てる理由」

では、金利上昇と建材高騰のさなか、なぜ今建てることに意味があるのか。

第一に、「時間の不可逆性」がある。

家は、住む時間のために建てる。30歳で建てた家に住む40年間と、35歳で建てた家に住む35年間は、同じではない。子どもの成長、親との時間、自分自身の身体の変化。5年の差は、数字以上の意味を持つ。

「安くなるまで待つ」という選択は、しばしば「住まない時間を買う」ことになる。

第二に、「制度的な追い風」はまだ存在する。

住宅ローン減税は縮小傾向にあるが、2025年入居分までは一定の控除が受けられる。ZEH補助金や地域型住宅グリーン化事業など、省エネ住宅への支援も継続している。これらの制度は、いつまでも続くとは限らない。

第三に、「建築家との協働」という選択肢がある。

建材高騰に対して、ハウスメーカーは価格転嫁で対応する。だが建築家は、設計で応答する。優先順位を明確にし、必要なものに集中投資し、不要なものを削ぎ落とす。コストを「管理」するのではなく「設計」するのだ。

坪単価という概念は、もはや思考の放棄となりつつある。何に、どれだけ、なぜ使うか。その解像度が、同じ予算でも全く異なる住まいを生む。

「待つべきケース」も正直に示す

とはいえ、すべての人に「今すぐ建てるべき」とは言わない。

待つべきケースは、明確に存在する。

ひとつは、土地が未確定な場合だ。土地探しに焦りは禁物である。土地は建築の可能性を規定する。妥協した土地は、設計でカバーできる範囲を超えることがある。

もうひとつは、ライフプランが流動的な場合だ。転職の可能性、家族構成の変化、親との同居の可能性。これらが未確定なまま建てると、数年で「合わない家」になるリスクがある。

また、自己資金が極端に少ない場合も慎重になるべきだ。金利上昇局面では、変動金利のリスクが高まる。返済余力に不安があるなら、頭金を増やす時間を取る選択は合理的だ。

「今建てるべきか」という問いへの答えは、「あなたの状況による」という、当たり前だが誠実な回答に行き着く。

コストではなく「時間」を設計するという視点

最後に、建築家としての視座を示しておきたい。

住宅の価値を「建築費」で測る習慣が、この国には根強くある。だが、建築費は「入口のコスト」に過ぎない。

本当に問われるべきは、その家で過ごす時間の質だ。

朝、光がどのように入るか。夕方、家族がどこに集まるか。10年後、20年後、この家はどう変化できるか。

私はこれを「時間の積層」と呼んでいる。住宅とは、時間を堆積させる装置だ。その装置の精度を高めることに、建築家は存在意義がある。

金利が0.5%上がることより、毎日の暮らしが0.5%ずつ豊かになることのほうが、30年のスパンでは圧倒的に重要だ。

2026年、金利上昇と建材高騰という現実は確かにある。だがそれは、「建てない理由」ではなく、「どう建てるかを問い直す契機」である。

家を建てるタイミングは、経済指標だけでは決まらない。あなた自身の時間軸の中で、今がその時かどうか。その問いに、建築家は伴走できる。

答えは、あなたの中にある。だが、問いの立て方を変えれば、答えも変わる。それを一緒に考えることが、私の仕事だ。

東京の建築家・河添甚に相談する東京で注文住宅を建てる費用の目安

河添 甚
河添 甚 代表建築家 / KAWAZOE-ARCHITECTS主宰

1977年、香川県生まれ。2002年に大阪工業大学工学部建築学科を卒業。2010年、河添建築事務所に参画し代表に就任。香川・東京の二拠点を構え、住宅から商業建築まで幅広い設計を手がける。

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