コンクリートの詩情—打ち放しが持つ物語性について

コンクリートの詩情—
打ち放しが持つ物語性について

河添 甚
河添 甚 代表建築家 / KAWAZOE-ARCHITECTS主宰

打ち放しコンクリートは、時間の経過とともに独自の表情を獲得する。雨跡、錆滲み、コケ—それらは欠陥ではなく、建築が環境と対話してきた証である。

素材が語る時間

コンクリートの打ち放しは、建築界において最も誠実な仕上げのひとつである。化粧を施さず、構造そのものを表に出すことで、素材の持つ力強さと繊細さが同時に現れる。型枠の木目、バイブレーターの痕跡、打設時の気温と湿度—すべてが表面に記録される。

安藤忠雄の住吉の長屋が世に問うたのは、コンクリートの美しさだけではない。住まうことの覚悟、素材との共生、そして建築家と施主の対話の深さだった。

経年変化という豊かさ

竣工直後のコンクリートは無表情に見える。しかし数年が経つと、雨だれの跡が筋となり、苔が影のある面に広がり、錆が鉄筋の位置を暗示する。これは劣化だろうか。私はそうは思わない。

建築が場所と時間に根差していく過程こそが、打ち放しコンクリートの本質的な美しさである。

現代における再解釈

近年、打ち放しコンクリートは新たな文脈で再評価されている。超高強度コンクリートの登場により、より薄く、より繊細な表現が可能になった。同時に、3Dプリンティング技術との融合も始まっている。

しかし技術が進化しても、素材の持つ物語性は変わらない。打ち放しが語るのは、常に「ここにある」という存在の確かさである。

東京の建築家・河添甚に相談する

河添 甚
河添 甚 代表建築家 / KAWAZOE-ARCHITECTS主宰

1977年、香川県生まれ。大阪工業大学建築学科卒業後、組織設計事務所で複合施設・商業施設の設計に携わる。2010年、河添建築事務所を設立。東京テクニカルカレッジ非常勤講師も務める。香川・東京を拠点に、「なぜその形か」を問い続ける設計を行う。

NEXT STEP

素材にこだわった設計について、
建築家に相談してみませんか。

コンクリート・木・土壁など、素材の選択から空間の個性は生まれます。あなたの建築の素材を一緒に考えましょう。

コラム一覧へ