先日は、東西アスファルト事業協同組合・田島ルーフィング株式会社主催の建築家 伊東豊雄さんの講演会に参加してきました。
セミナーのテーマは、近年の代表作を通して「これからの建築」を語るというものでした。
伊東豊雄さんといえば、初期の代表作に「シルバーハット」や「アルミの家」などがあり、
また「仙台メディアテーク」などでも知られています。
近年では「台湾大学社会科学部棟」「台中国立歌劇院(台中メトロポリタンオペラハウス)」などの国際的なプロジェクトを手がけ、プリツカー賞(建築界のノーベル賞)も受賞されています。
目次
現代建築とグリッド構造への問題意識
講演の冒頭では、現代社会の住環境をグリッドで表現したグラフィックを用いながら、
「グリッドを許容すれば建築をする意味がない」と語られていたのが印象的でした。
秩序的な構造に対するアンチテーゼとして、建築の自由性や自然との関係性を模索されていることが伝わってきました。
台中国立歌劇院(台中メトロポリタンオペラハウス)
2014年に台湾・台中で完成したこの建物は、複雑な三次曲面構造で知られています。
施工方法の確立や施工会社の選定には大変な苦労があったそうですが、メッシュシート型枠の採用によって自由曲面の形成と施工効率を両立。
現地施工会社と連携することで、工期短縮と経済性の確保が実現されたとのことです。
岐阜県立図書館|みんなの森 ぎふメディアコスモス
伊東さんは「外と内を明確に分ける建築」に対し、
日本家屋のように内外の境界を曖昧にすることで実現する本来のパッシブデザインを追求されています。
その思想を具現化したのがこの図書館です。
特徴的な「クラゲのようなグローブ膜構造」が自然換気の役割を果たし、
夏は上昇気流で熱を排出、冬は暖気を取り込むパッシブな環境制御を実現。
可燃性素材ゆえに消防や行政との調整には多大な労力を要したそうです。
CAPITA GREEN(シンガポール)
こちらはシンガポールに建設された高層ビル「CAPITA GREEN」。
複数の半外部空間に植栽を配置し、建物全体で都市の熱環境を緩和する構造になっています。
頂部のモニュメントは装飾ではなく、外気の取り込み・排気を行う換気装置としても機能しています。
この建築もまた、自然と建築が融合する「都市型パッシブデザイン」の好例といえます。
最後に|新国立競技場への言及
講演の最後には、やはり多くの方が気になる「新国立競技場」の話題にも触れられました。
伊東さんご本人は「今はまだ何も語れない」とのことでしたが、
2020年の東京オリンピックを前に、設計をめぐる議論や日本建築界の動向に関して今後も注目が集まりそうです。
▶︎ 関連ページ:東京事務所|建築ハウツー|Metabrain Lab(ビジュアライゼーション)
