はじめに

地方らしい景観と自然条件を活かしつつ、プライバシーと快適性も両立する住宅を設計するため、まず「敷地調査」は不可欠なステップです。本稿では、福山市駅家町の敷地条件を想定しながら、敷地調査で押さえるべき視点と設計への結びつけ方をご紹介します。

1. 敷地周囲の環境把握

1.1 地形・高低差と通風動線

敷地の起伏や周囲の建物の高さを確認し、風が通るルートを把握。自然な風の抜けを設計に活かすことで、エアコンに頼りすぎない快適な空間を目指します。

1.2 日照・影の移動

南側・東西・北側の隣地状況を確認し、季節変化での影の入り方をシミュレーション。吹き抜けや大開口の配置を最適化します。

1.3 視線とプライバシー

道路・隣家・通路からの視線を想定し、ミラーガラス・格子・ルーバーの使用や、植栽で視線遮断するゾーニングを検討。

1.4 緑景と遠景の取り込み

敷地の前景・中景・遠景にどんな緑や風景があるかを確認。庭や窓の配置で視線の抜けをつくり、「田園らしさ」を住まいに取り込む設計への布石とします。

2. 敷地調査から設計へつなぐ視点

2.1 開放性と囲まれ感のバランス

緑を感じる開口を確保しつつ、外部視線を遮る壁やルーバー、植栽の組み合わせで “囲まれ感” を補う設計を探ります。

2.2 昇降動線・アプローチ計画

敷地形状を活かした玄関アプローチや玄関ポーチの配置。自然な導線と視線誘導を意識して設計。

2.3 外部空間とのつながり

庭や植栽と建物の関係性を整理。リビングやデッキが自然とつながるような敷地利用を検討。

2.4 コスト・施工性の確認

敷地条件による造成コストの有無、道路高低差・擁壁・排水計画などを初期段階で洗い出し、設計上の制約要素に落とし込みます。

おわりに

敷地調査は単なる「測る」「写す」作業ではなく、設計の“伏線”を敷く作業です。この段階での慎重な読み取りが、都会と田園が融合した心地よい住まいをつくる基盤になります。次回は、これらの調査をもとにしたプレゼン設計案をご紹介します。