香川で家を建てるということ——土地・費用・設計事務所の選び方

香川で家を建てるということ——
土地・費用・設計事務所の選び方

河添 甚
河添 甚 代表建築家 / KAWAZOE-ARCHITECTS主宰

香川で家を建てることを考えている方から、相談を受けるたびに気づくことがある。東京から移住を検討している方も、香川で生まれ育った方も、「香川で家を建てる」という選択肢の前で抱える問いが、実は似ているということだ。

土地はどこがいいのか。建築費は東京と比べてどのくらい違うのか。地元の工務店と設計事務所、どちらがいいのか。移住のタイミングはいつがいいのか。この記事では、香川を拠点に設計を続ける建築家として、正直に答えていきたい。

香川の土地——選び方の基準

香川は、コンパクトな県だ。高松市を中心に、さぬき市・東かがわ市・丸亀市・坂出市などの都市が点在し、それぞれ生活圏として完結している。

高松市内の住宅地は、利便性と価格のバランスが取りやすい。ただし、人気エリアは地価が上昇しており、特に中心部から車で15〜20分圏内の住宅地は需要が高い。さぬき市や東かがわ市方面は、土地面積を広く取れる一方で、小学校や商業施設へのアクセスを事前に確認する必要がある。

私が相談を受けてよく話すのは「土地の広さより、接道(道路との関係)と方位を優先してほしい」ということだ。南向きの整形地は理想だが、北向きでも設計で光を引き込む方法はある。むしろ、接道幅が狭い旗竿地や変形地は設計の難易度が上がるため、価格が安くても慎重に判断してほしい。

建築費——東京と何が違うのか

一般的に、香川の建築費は東京より10〜20%程度安いと言われる。人件費と材料の流通コストの差が主な要因だ。

ただし「安い」には条件がある。地元工務店に一般的な仕様で依頼した場合の話であり、特殊な素材や高い仕様を求めれば、コストはどこでも上がる。また、2024年以降の建材高騰と人手不足は香川でも例外ではなく、以前ほどの価格差は縮まっている。

重要なのは「坪単価」より「総費用」で考えることだ。外構工事(庭・駐車場・塀)、照明・カーテンなどの内装費、引っ越し費用、登記費用——これらを含めた総額を最初から把握しておくことが、後悔しない家づくりにつながる。

香川の気候と設計——見逃せない条件

香川は、年間降水量が日本で最も少ない県のひとつだ。晴れの日が多く、日照時間も長い。この気候は設計に直結する。

南向きの大きな開口部を設ければ、冬でも日射取得(太陽の熱を室内に取り込む)が期待できる。ただし夏の日射は強烈で、庇(ひさし)の出寸法を適切に設計しないと、夏に暑くて冬に寒い家になる。

また、香川は台風の通り道になることもある。屋根の形状や開口部の防風対策は、設計段階で必ず検討しておきたい。瀬戸内の温暖な気候を活かすには、風の流れを読んで開口部を配置し、自然通風を促す設計が有効だ。

地元の工務店か、設計事務所か

「地元の工務店に頼めばいいのでは」という声はよく聞く。地域に根づいた工務店は、土地の気候・風土・地盤を熟知していることが強みだ。

ただし工務店は、設計と施工を一体で請け負うことが多い。この場合、設計の自由度よりも「施工できる範囲」で設計が決まる傾向がある。

設計事務所に依頼する場合、設計者が施主の側に立ち、工務店(施工会社)を選定・監理する立場になる。設計の意図が正確に施工に反映されているかを確認しながら家が建つ。

どちらが正解ではない。重要なのは「誰があなたの利益を代表してくれるか」を理解したうえで選ぶことだ。

移住者が知っておくべきこと

東京から移住して香川で家を建てる方には、特にお伝えしたいことがある。

土地を買う前に、まず賃貸で暮らしてみることをすすめている。「この街に住んでみると、思っていた生活と違った」というケースは少なくない。通勤・通学の動線、商業施設の距離感、近隣の雰囲気——これらは地図やネットだけでは分からない。

香川県や各市町には移住支援の補助金制度もある。条件は毎年変わるため、移住相談窓口への確認を怠らないでほしい。

土地と家の前に、暮らしを先に設計する。それが、香川で家を建てることを成功させる最初の一歩だと思っている。

河添 甚
河添 甚 代表建築家 / KAWAZOE-ARCHITECTS主宰

1977年、香川県生まれ。2002年に大阪工業大学工学部建築学科を卒業。2010年、河添建築事務所に参画し代表に就任。香川・東京の二拠点を構え、住宅から商業建築まで幅広い設計を手がける。

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