水の塔を再生したゼロエネルギーホテル|Aquaturm Hotel(アクアターム・ホテル)

水の塔を再生したゼロエネルギーホテル|Aquaturm Hotel(アクアターム・ホテル)

2018年7月21日

ヨーロッパ滞在4日目は、前日に宿泊した水の塔(給水塔)をホテルへ用途変更し、さらにゼロエネルギーを実現している Aquaturm Hotel(アクアターム・ホテル)を見学しました。建築の創意工夫と環境技術が融合した、学びの多いプロジェクトでした。

Aquaturm Hotel|水の塔を再生したゼロエネルギーホテル

Hotel Aquaturm – Zero Energy

用途変更×パッシブデザイン=ゼロエネルギー

水の塔をホテルにコンバージョンしたAquaturm Hotelの全景
給水塔を活かした垂直ボリューム。環境技術を積層する“タワー型パッシブホテル”。

このホテルは、建築家とその息子さん2人が中心となって数年かけて実現したゼロエネルギーのパッシブホテル。
設計のみならず施工まで自分たちで手掛けたというスケールと執念に圧倒されます。

外装・増築計画|“塔の姿”を活かしつつ、発電外皮へ

水の塔外装を活かしつつ増築されたAquaturm Hotelの外観
左の連結ボリュームが増築部。黒い外装パネルは発電用ソーラーパネル(非発電面は意匠連続性のためダミーを採用)。
門型フレームが象徴となるエントランスと水堀
門型フレームがエントランスを象徴化。外周の水堀は外皮冷却に寄与(夏季に水の熱容量で温度上昇を抑制)。

環境設備|発電・蓄熱・熱利用の“多層化”

外装に組み込まれた太陽熱温水パネル
太陽熱温水パネルを外皮に組み込み、給湯・暖房負荷を低減。
設計者による太陽熱パネルの解説
設計者によるパネル構成・配管系の説明。外皮一体型の集熱・発電が特徴。
機械室での設備機器解説の様子
機械室での系統解説。発電・蓄熱・空調を階層的に最適化
太陽光発電の蓄電池ユニット
蓄電池で需要ピークを平準化。売電・自家消費をバランス制御。
発電・消費・売電状況を可視化するモニター
リアルタイムの発電・消費・売電モニター。発電分で必要電力を賄い、余剰は売電。

配管・給湯・空調|メンテナンス性を高める“見える設計”

サプライ・リターンのダクト経路
空調のサプライ/リターンダクト。タワー計画ならではの立体配管計画。
客室ごとに分散配置された給湯設備
廊下側に分散配置された客室給湯ユニット。点検性と更新性を両立。

最上階体験|タワー型ホテルが切り取る風景

最上階VIPルームのバルコニーから望む街のパノラマ
最上階VIPルームのバルコニーからの眺望。塔の垂直性が都市景観を編集する。

既存ストックの構造・形状ポテンシャルを読み替え、外皮を発電・集熱のアクティブレイヤーに転換。さらに水堀や分散設備で運用・更新を最適化。
用途変更(コンバージョン)と環境設計を高次元で統合した、示唆に富むプロジェクトでした。