Project5 │
プロジェクト5
SILENT ARC │ ナーブス形状が生む、漂うような建築の気配
プロジェクト概要
緑に囲まれた環境の中に、静かに浮かぶように佇む自由曲面の建築。 ナーブス曲面によって構成されたパイプ状のボリュームが、土地と空、現実と仮想のあいだに存在する輪郭を描き出します。
機能やスケールをあえて限定せず、実在と非実在の境界を曖昧にするこの建築は、空間体験そのものに価値を置いたプロジェクトです。

空間としての彫刻、彫刻としての空間
SILENT ARC は建築であると同時に、彫刻的存在でもあります。 自由曲面が描くかたちは、構造や用途から解放され、風景と視線の間に静かに割り込むように設置されています。
見る者の位置によって、建築は有機的な地形のようにも、人工的な装置のようにも見え、その解釈の揺らぎ自体が空間の厚みを生み出しています。

中を通る、または囲まれる体験
パイプ状に構成されたこの建築では、「通過する」「囲まれる」「浮遊する」といった複数の体験が同時に生まれます。
床・壁・天井の境界は存在せず、表面は流れるように連続し、内部と外部、光と影、地面と空が反転する瞬間があります。
建築の輪郭が固定されず、身体の位置によって常に変化し続ける体験そのものが、この空間の主題です。

水・空・地形との関係
SILENT ARC が設置されたのは、緑と水に囲まれた小さな島。 地形の中に「置かれた」のではなく、風景の文脈から生まれたような構成としています。
建築の曲面は、空の色や水面の反射を取り込み、周囲の環境と“共鳴”するように存在します。 この空間では、素材ではなく気配こそが空間を形づくっているようにも感じられます。

建築の意味を脱構築する試み
このプロジェクトは、建築における「用途」「構造」「スケール」といった枠組みを意図的に外し、建築という言葉の定義そのものを再考する試みでもあります。
どこまでが内部で、どこまでが外部なのか。 どこに始まりがあって、どこに終わりがあるのか。 その曖昧さこそが、現代における空間と感覚の関係性を拡張する鍵となります。

実在と非実在のあいだに立ち上がる建築
この建築は、現実に建てられたものではなく、メタバースやVR環境での展示・体験も想定して設計されています。
しかし、単なるCGや仮想建築としてではなく、「実際にそこにいるように感じられる」ことを重視してデザインされました。
そのため、形やマテリアルよりも、滞在感・空気感・時間感覚をどう設計するかに焦点を当てています。
建築がただ存在するのではなく、人の記憶に“経験”として刻まれること。 それこそが、SILENT ARC の真の実在性であると考えています。
