Project4 │

プロジェクト4

Donut Shell Pavilion │ 木とガラスで構成された、開かれた輪のかたち

プロジェクト概要

公園の一角に設けられたこの建築は、木ブロックを組み合わせたドーナツ状のシェル構造と、それをつなぐガラスによって空間化された公共パビリオンです。

円環状の平面は中央に大きな外部共有スペースを抱えこみ、周囲の緑と対話しながら、訪れる人々にとっての「開かれた場所」をつくり出します。都市の中における“囲われた余白”として、自然と共鳴する空間的存在を目指しています。

Donut Shell Pavilion │ 木とガラスで構成された、開かれた輪のかたち

ランダムに構成された木ブロックの詩性

このパビリオンは、一定の規則に従わずランダムに積層された木ブロックで構成されています。単なる視覚的演出ではなく、構造の“間”を利用した光と影のフィルターが空間にリズムをもたらします。

ブロックとブロックの隙間から差し込む自然光は時間とともに変化し、空間そのものを“呼吸する存在”のように変容させます。周囲の木々や天候によって空間の雰囲気が刻一刻と変わる様子は、建築というよりも風景の一部のようです。

ランダムに構成された木ブロックの詩性

中心の“空白”が空間の自由度を広げる

中央に設けられた広場状の共有スペースには、明確な機能やプログラムがありません。ここは舞台であり、広場であり、時にただの空白でもある。

使い方は決まっておらず、座る/集まる/寝転ぶ/ただ通過する──すべてが許される設計です。誰かの意図によって使い方を“定義されない”ことで、訪れる人にとって最も適した使われ方が、その都度立ち上がります。

この形式は、都市における「余白の価値」を再認識させる空間的提案でもあります。

中心の“空白”が空間の自由度を広げる

空と地面のあいだで呼吸する建築

ドーナツ状の構造体は、その形状と開放性によって、風や音、光の変化を空間の内部にそのまま取り込みます。開口部は明確に設けられておらず、360度どこからでも自由に出入り可能です。

この非対称かつ無方向な形式は、建築が「固定された正面を持たない」ことの可能性を探るものであり、人の動きや場の活動によって日々その表情を変えていきます。

天井がなく、壁も曖昧で、床と地面の間に明確な段差がないこのパビリオンは、空と地面の“あいだ”に漂うような建築であるとも言えます。

空と地面のあいだで呼吸する建築

建築が「体験のきっかけ」になる

このプロジェクトでは、建築が何かを提供するのではなく、空間が人の感覚や関係性を更新するきっかけになることを目指しました。

パビリオンの輪郭、空白、光のゆらぎ、自然素材のざらつき──それらの断片が、都市における風景の一部として溶け込むと同時に、訪れる人の中で静かに何かを動かす存在であること。

人の記憶に残るのは、建築の姿ではなく、そこで感じた光や風、沈黙の質かもしれません。

建築が「体験のきっかけ」になる