パリ中心部、ルーヴルとポンピドゥーの間に、円形の石造建物が立っている。

かつてコムディティ取引所として使われていたブルス・ドゥ・コメルス。外観はクラシカルな歴史的建築に見えたが、中に入ると、別の建物がそこにあった。


エントランスから中に入ると、石造の外殻の奥に、コンクリートの円筒が立ち上がっているのが見えた。

外側は石、内側はコンクリート。その二重の円の「隙間」が、建物の主役になっていた。

安藤忠雄による改修、2021年。


隙間を歩いた。

石造の壁とコンクリートの壁の間を縫うように、スロープや階段が巡らされている。ときどき上を見上げると、既存のガラスドームの光と、コンクリート円筒上端の隙間から入る光が重なっている。

上に行くほど、視点が変わる。同じ「間」にいながら、フロアごとに別の建物にいるような感覚があった。


「何も壊さず、すべてを内側に挿入する」という方針を、実際に歩いて理解した。

石造の外殻は傷ついていない。でも内部は完全に書き換えられた。歴史的な外皮と、新しい器が、1枚の壁の厚みを共有して共存している。

なぜパリのど真ん中に、この手法が選ばれたのか。旧証券取引所——かつて「価値のやり取り」が行われていた場が、いまはアートと建築の対話の場として再生されている。その転換を、建物そのものが記憶している。


外に出ると、石造のファサードがまた普通の歴史的建築に見えた。

でも内側に何があるかを知った後では、外の見え方が変わっていた。