「店舗の内装を変えたい」「新しく店を出したい」——そう考えたとき、多くの人が最初に相談するのはインテリアデザイナーや内装工事会社だ。しかし本当に店舗に求められる設計とは何か、建築家と内装デザイナーの違いは何か——これを理解していないと、あとで「こんなはずじゃなかった」という結果になりかねない。
この記事では、店舗設計を建築家(設計事務所)に依頼する理由と、東京・香川での事例を交えながら解説する。
店舗設計と内装設計の違い
「店舗設計」と「内装設計(インテリアデザイン)」はよく混同される。しかし両者には本質的な違いがある。
内装設計:既存の建物(躯体・構造)の内側を仕上げること。壁・床・天井の素材や色、照明、什器配置などが主な対象。建築確認申請が不要な軽微な変更の場合が多い。
店舗設計(建築設計):建物の用途変更・間取り変更・構造変更を含む設計。建築基準法上の確認申請が必要な場合がある。防火区画・避難経路・換気設備・サイン計画など「建物全体」を設計する。
建築家に店舗設計を依頼すべき理由の核心はここにある——店舗は「建物」として法的要件を満たす必要があり、それを設計・申請できるのは建築士資格を持つ建築家だけだからだ。
内装工事会社やデザイン会社に依頼した場合、建築士資格が必要な確認申請業務は別途建築士に委託する必要がある。最初から建築家に依頼すれば、設計と申請が一体で進む。
建築家が店舗設計で強みを発揮する理由
1. 法規制と安全性への対応
店舗は住宅と異なる法規制の下に置かれる。建築基準法・消防法・食品衛生法(飲食店の場合)・風俗営業法(バー・クラブなど)——複数の法律が絡み合う中で、安全で合法な設計を行うのが建築家の役割だ。
特に重要なのが防火区画と避難経路の設計だ。テナントビルに入居する店舗でも、防火シャッターの位置・避難動線・非常口の確保は法的要件として求められる。これらを満たしながらデザイン性を確保するのは、建築の専門知識が必要な作業だ。
2. 空間の「構造」を設計できる
建築家は空間を立体的に把握し、構造(柱・梁・壁)から店舗の空間を設計できる。
内装デザイナーは既存の躯体の内側を仕上げるが、建築家は「この壁を取り除けるか」「天井を上げられるか」「地下に掘り込めるか」といった構造的な判断ができる。これにより店舗の可能性が格段に広がる。
東京・都市部のテナント店舗では、天井高が低い・柱が邪魔・古い配管が多いといった制約がある。こうした制約を建築家の設計力で解決することで、他店には真似できない空間が生まれる。
3. 客動線・作業動線の専門的な設計
店舗設計において最も重要な要素のひとつが動線だ。客の動き方(入店→レジ→退店)と、スタッフの作業動線(厨房→ホール→バック)は、空間設計の核心になる。
建築家は平面計画(間取り)だけでなく、断面計画(高さ・視線)も含めた立体的な動線設計が得意だ。「このカウンターは高すぎる」「このレジの位置では店員が客の死角に入る」といった問題を、設計段階で解決できる。
4. 素材・ディテールの一貫したコントロール
建築家は「この店舗で何を伝えたいか」というコンセプトから素材・照明・サインまでを一貫してデザインする。
インテリアデザイナーは内装仕上げが得意だが、外観・ファサード・看板・エントランスの設計まで建築家が一括して担当することで、店舗の「顔」が一貫したコンセプトで設計される。
東京・品川区での店舗設計事例
東京の店舗設計は「制約との戦い」だ。都市部の店舗に多い制約: - 準防火地域・防火地域(外装・開口に制限) - 接道条件(前面道路幅が狭い) - 隣接建物との間隔(採光・通風が限られる) - テナントビルの制約(原状回復義務・共用部への影響制限)
品川区・目黒区・渋谷区など東京の商業エリアでは、路面店・ビル内テナント・ビルの1〜2階改装など多様な形態の店舗設計を手がけてきた。
AY-HOUSEの設計手法の応用:連棟形式の都市型建物では、閉じたファサード(道路側に窓を最小化)と内部の豊かな空間(ライトコート・吹き抜け)の組み合わせが有効だ。これは住宅だけでなく、プライバシーを重視するサロン・クリニック・高級レストランの設計にも応用できる。
東京の店舗設計で最も難しいのは「狭い面積で広く見せること」だ。鏡・白壁・高天井だけに頼るのではなく、空間の構成(どこに開口を設けるか、視線の抜けをどう作るか)が本質的な解決策になる。
香川での店舗設計事例
香川・高松での店舗設計は、東京とは異なるアプローチが必要だ。
香川の店舗設計に求められる特性: - 駐車場の確保:香川は車社会。店舗の設計には必ず駐車場計画が伴う - 平屋・低層の店舗:香川では2階建て以下の路面店が多い - 瀬戸内の気候対応:夏の日射が強いため、日射遮蔽と通風設計が重要 - 地域素材の活用:讃岐の石材・地域産木材を活かしたデザインが可能
香川では美容室・カフェ・クリニック・小売店など、地域密着型の小規模店舗の設計実績がある。地域の工務店と連携した施工で、コストを抑えながら建築家設計の質を実現できる。
店舗設計の費用相場
店舗設計の費用は、住宅設計と同様に工事費の10〜15%程度が設計監理費の目安だ。
| 工事費 | 設計監理費(10%) | 設計監理費(15%) |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 100万円 | 150万円 |
| 2,000万円 | 200万円 | 300万円 |
| 3,000万円 | 300万円 | 450万円 |
店舗の場合、以下の要素が費用に影響する: - 用途変更の有無(確認申請の必要性) - 設備工事の複雑さ(飲食店の厨房換気・グリストラップなど) - 内外装の仕上げグレード - スケジュール(工期が短いほどコストが上がりやすい)
建築家に依頼すべき店舗のケース
すべての店舗で建築家が必要というわけではない。しかし以下のケースでは建築家への依頼を強く推奨する:
- 用途変更を伴う改修(住宅→店舗、倉庫→カフェなど)
- 建物の構造に手を入れる改修(壁・柱の撤去・追加など)
- 開業コンセプトを建物で表現したい(空間がブランドになる店舗)
- テナントビルの設計基準をクリアしながらデザインしたい
- 長期的に資産価値のある店舗をつくりたい
「安く早く」仕上げたい内装工事には内装会社が向いている。しかし「この場所でしかできない店舗空間をつくりたい」という場合は、建築家への依頼が答えになる。
よくある質問(FAQ)
Q: 東京・品川区で店舗設計を建築家に依頼するといくら?
A: 建物工事費の10〜15%が設計監理費の目安です。工事費1,500万円の店舗改装なら設計費は150〜225万円程度です。用途変更を伴う場合や建築確認申請が必要な場合は、申請費用が別途かかります(20〜50万円程度)。初回相談は無料です。
Q: 香川・高松で店舗設計を建築家に依頼するメリットは?
A: 香川は車社会のため駐車場計画が重要で、敷地全体の計画が店舗の成功に直結します。建築家は建物・駐車場・外構・サインを一体で設計できます。また地元産材・地域の職人を活かした設計で、他店と差別化できる空間を実現できます。
Q: 内装工事会社に頼むのと建築家に頼むのは何が違いますか?
A: 内装工事会社は施工が主体で、設計は付帯サービスとして提供されることが多いです。一方、建築家は設計が主体で、法規制・構造・空間構成を含めた本質的な設計を行います。「建物としての正確な設計」が必要な場合は建築家、「既存空間の仕上げ変更」が中心なら内装会社が適しています。
Q: 店舗設計の相談はどの段階からできますか?
A: 「店を出したい」という最初の構想段階からご相談いただけます。物件探し・テナント条件の読み方・スケルトン物件と居抜き物件の選び方など、開業前の段階から建築家のアドバイスが役立ちます。KAWAZOE ARCHITECTSは東京・香川の両拠点から店舗設計のご相談に応じています。