世の中には、建築家が手掛けた椅子やテーブル、照明などの名作家具が数多く存在し、商業施設や公共施設でも採用されています。製品化され大量生産されることで、誰もが手に入れられるプロダクトとして定着しています。しかし、住宅における造作家具はまったく異なる存在です。建築家が住宅設計の一部として提案する造作家具は、オーダーメイドで作られる世界に一つだけの「一点もの」。今回は、その造作家具の魅力と価値について考えてみましょう。
建築家がデザインする「一点ものの家具」
名だたる建築家がデザインしたプロダクト家具は美しく、時代を超えて愛される存在です。ミッドセンチュリーを代表する名作チェアや照明は今なお高い人気を誇り、インテリアの象徴ともいえるでしょう。しかし、プロダクト家具は大量生産が前提であり、住宅の空間そのものに合わせて作られるものではありません。
住宅設計と一体化する造作家具
住宅設計において、造作家具は空間の一部としてデザインされます。本棚や収納、テレビボード、ダイニングテーブルなどを建築と一体化させることで、既製品では得られない統一感と機能性を実現できます。建築家による住宅設計では、この造作家具が空間の完成度を高める重要な要素となります。
ライフスタイルに合わせたカスタムデザイン
造作家具の最大の特徴は「ライフスタイルに合わせた設計」です。たとえば、読書好きの方には吹き抜けの壁一面を利用した本棚、リモートワーク中心の家庭にはワークスペースを兼ねたデスク、子育て世帯にはおもちゃ収納を兼ねたベンチシートなど、住まう人の生活動線に寄り添ったデザインが可能です。
造作家具は「置く家具」ではなく「空間に組み込む家具」。そのため、動線や採光、視線の抜け方まで計算されており、住まい全体の完成度を大きく左右します。
一点ものとしての価値
有名建築家の家具は確かに憧れの存在ですが、住宅の造作家具には「その住まいでしか成立しない価値」があります。クライアントのためにゼロから設計されるため、完全オーダーメイドであり、世界に一つしか存在しない家具です。これは、住宅と同じく「建築の一部」としての家具といえるでしょう。
まとめ:建築家とつくる家具は住まいの質を変える
プロダクト家具と造作家具は、どちらも魅力的ですが目的が異なります。既製品は誰もが手にできる普遍性を持ち、造作家具は住まい手の暮らしを支える「唯一無二の存在」です。新築やリノベーションの際に造作家具の提案があれば、ぜひその価値を検討してみてください。
造作家具を取り入れた事例は ポートフォリオ でもご覧いただけます。
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