愛媛県松山市「坂の上の雲ミュージアム」|安藤忠雄の建築と新旧の対話

愛媛県松山市「坂の上の雲ミュージアム」|安藤忠雄の建築と新旧の対話

2021年8月10日

 先日は愛媛県松山市にある建築家・安藤忠雄氏設計の「坂の上の雲ミュージアム」を訪れました。都市の中心部にありながら、周囲の緑と建築が見事に調和した建物です。

建築家・安藤忠雄設計「坂の上の雲ミュージアム」|愛媛県松山市

設計は日本を代表する建築家、安藤忠雄氏。
コンクリート打放しとガラスの構成による明快なデザインは、松山の緑豊かな丘陵地と呼応しています。

安藤忠雄 坂の上の雲ミュージアム 外観 松山市 建築写真
坂を登る途中で見えてくる正面ファサード(安藤忠雄設計)

アプローチとファサードの構成

坂を上りきった先に現れるファサードは、重厚なコンクリートの壁とガラスの透明感が対比的。
アプローチ手前のサインもコンクリート打放しで統一され、建物全体の静謐な印象を強調しています。

坂の上の雲ミュージアム ファサード 安藤忠雄 建築
旧建物に向かって開くガラス張りの外観

水盤とオーバーハング構造

建物の下部には水盤が広がり、周囲の光を柔らかく反射。
オーバーハングした構造体は浮遊感を演出し、安藤建築らしい「静けさと緊張感」を感じさせます。

安藤忠雄 坂の上の雲ミュージアム 水盤 建築
オーバーハングした建物の下に静かに広がる水盤

内部空間とブリッジ構造

内部はガラスカーテンウォールとスロープによる回遊動線で構成され、まるで坂道を登るように展示空間が展開します。
中央には象徴的なブリッジが渡され、柱を持たない構造が空間の軽やかさを生み出しています。

坂の上の雲ミュージアム 内部 ブリッジ 安藤忠雄 建築
中央吹抜けを横断する象徴的なブリッジ構造

新旧の対話を生む建築構成

ガラスの向こうには大正時代の洋館「萬翠荘」が見え、新旧の対話を感じさせる構図。
素材の対比と透明性が、建築を単なる展示施設以上の「時間の交差点」として成立させています。

坂の上の雲ミュージアム 萬翠荘 風景 松山市 安藤忠雄
ガラス越しに見える萬翠荘。新旧の対話を象徴する構成。

松山市中心部という都市的文脈の中で、というテーマを立体的に体現したこの建築。
訪れるたびに、自然と人間、過去と未来の関係性について考えさせられます。

建築や空間デザインの視点からの考察は、Metabrain Lab|パラメトリック・ビジュアライゼーション研究でも発信しています。