羽田からゲートへ向かう時間

羽田空港では、ANAのダイヤモンドデスクで案内されたカウンターでチェックイン手続きを行った。出発直前まで日本側の仕事の予定が動き続けており、「今回は見送るべきかもしれない」という判断が頭をよぎっていたが、最終的にはスケジュールを何とか整理して空港に来ている。

復路のパリ発・日本行きの便は事前にビジネスクラスで確定していたものの、往路はプレミアムエコノミーで予約していた。当日、カウンターでダブルアップグレードポイントが適用され、行きの便もビジネスクラスに変わることが決まった。日本に仕事を残したままの出発だったこともあり、移動中に体力を削られすぎない環境が整ったのは正直かなり助かった。

手続き後、ゲートへ向かう通路を歩きながら、光の入り方や天井の高さ、床材の切り替えなどをつい目で追ってしまう。空港は、毎回“巨大な移動装置としての建築”を実感させてくれる場でもあり、出発前からひとつのフィールドワークが始まっているような感覚になる。


787ビジネスクラスという移動空間

今回の機材は787。ビジネスクラスはフルフラット仕様で、囲われ方が控えめな半個室のような構成になっている。視線は適度に抜けながらも、必要な部分だけ境界が立ち上がり、長時間座っていても落ち着いて過ごしやすい。

天井の曲線、照明の色温度、エンジン音の小ささなどが一つの環境として整理されていて、“移動のための空間”でありながら、作業と休息のどちらにも切り替えやすいバランスになっている。座席まわりの寸法の取り方や、囲われ具合の調整に、プロダクトデザインとインテリアの中間のような設計の手つきが感じられた。


機内での過ごし方

離陸後は、日本に残してきた案件のメモや、帰国後の段取りの整理から始めた。テーブルの可動範囲や、コンセント・照明スイッチの配置がコンパクトにまとまっており、作業モードから休息モードへの切り替えがスムーズにできる。直前まで仕事を抱えた状態での出発だったことを考えると、この環境にはかなり助けられた部分が大きい。

機内食はコース仕立てで、前菜からメイン、デザートまで一通り揃っていた。一皿ごとのポーションや器のサイズ感がほどよく抑えられていて、長時間フライトの中でも無理なく完食できるボリュームに調整されている。移動の最中に、きちんとした食事と短い休憩のリズムをつくれることに、ささやかながら救われる感覚があった。


着陸前の景色と気持ちの切り替え

着陸前になると、窓の外に見える光と影のパターンが少しずつ変わり、フランスでの建築視察が始まる実感が静かに高まってくる。滑走路や誘導灯のリズムは、都市インフラとしてのスケールを感じさせる要素で、毎回見ても飽きない。

パリが近づくにつれて、頭の中も自然と現地モードに切り替わっていく。出発直前まで仕事との兼ね合いで迷っていたぶん、「ここまで来られた」という安堵と、この時間を無駄にしないようにという小さな緊張感が同時に残っていたフライトだった。


まとめ

ギリギリまで出発を迷う状況ではあったが、結果的には、往路も含めてビジネスクラスにアップグレードされたことで、機内で作業と休息のバランスを取りながら、日本に残してきた仕事の整理とフランス建築視察の準備を進めることができた。環境としての機内のつくり方やサービスの構成に助けられた部分も大きい。

こうして何とかパリ行きの便に乗れたこと自体が、今回の建築視察のスタートラインでもある。ここから、フランス建築視察2025が本格的に始まっていく。